【「くまモン」に学ぶPR戦略②】小山薫堂さん直伝の名刺を使ったコミュニケーション

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前回のブログ記事(【「くまモン」に学ぶPR戦略①】Buzz型施策とAlwaysOn型施策の連携が成功の鍵)にて、「くまモン」のPR戦略の大きな軸についてお話をさせていただきましたが、今回は、非常に素晴らしいアイディアだと思う「くまモン」の名刺を使ったコミュニケーションについてご紹介します。

■くまモンは「ゆるキャラ」ではなく「売るキャラ」

ご存知の方も多いと思いますが、「くまモン」は熊本県庁内で熊本県営業部長という知事、副知事の次に役職の高いポストについています。公務員という年功序列が色濃く残る文化の中で、デビューから約3年で異例の出世を成し遂げたといってもよいでしょう。

という事で、現在、営業部長な「くまモン」ですが、もちろん初めから今のポジションにいたわけではありません。デビューしたての時期は、とにかく人前に出て名前を覚えてもらうために、ひたすら名刺交換を繰り返すことに専念していたのです。
※特に、「くまモン」は九州新幹線で関西エリアの観光客を熊本県に呼び込むプロジェクトが発端となって生まれたキャラクターなので、大阪エリアでの営業活動がメインでした。

1年目(2010年)は、出張先の大阪で名刺を1万枚渡すことを県庁からノルマとして命じられ、営業部長に就任した2年目(2011年)は、熊本県の特産品とコラボしてくれるメーカー企業を10社探すという、よりハードなノルマが「くまモン」には課せられていました。当時(2年目)の「くまモン」部長の営業活動の大変さがわかる貴重なムービーがYoutubeに記録されていましたので、是非、見てみてください。あの「くまモン」にも、こんな時代があったのかと励まされます。

〇『くまモン、営業はつらいよ』の巻


■「くまモン」の営業活動を強力にバックアップしているのが名刺

そんな中、少しでも「くまモン」の営業活動を助けようとPRチームが工夫したアイディアが名刺のクリエイティブです。

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そもそも、「ゆるキャラ」が名刺交換する行動自体がツッコミどころがあるのですが、「くまモン」の名刺は上記のように、様々なバリエーションがあり、また、それぞれの名刺に自虐ネタ的な面白いコピーが書いてあるので、一枚名刺をもらうと、他の名刺も見てみたくなる上手い仕掛けがほどこされています。

そして、ツッコみどころのある「くまモン」の名刺を渡すことで、「くまモン」のことをブログやFacebookなどのソーシャルメディアに投稿したくなるモチベーションを相手に抱かせ、その投稿がWeb上で拡散されることで、その投稿を見た別の人が「くまモン」に会いに行くという良い循環が生まれます。
※しかも、名刺が手元に残ることで、ソーシャルメディア上に投稿しやすい!

また、渡した名刺にブログやソーシャルメディアアカウントなどへのQRコードを印刷することで、そこを起点にAlwaysOn(常時接続)型の施策への導線を作り、「くまモン」との出会いを一過性のものに終わらせない工夫もしています。

■小山薫堂さんの日光金谷ホテルの事例がヒントに

実は、この「くまモン」の名刺施策は、小山薫堂さんの日光金谷ホテルでの名刺を使った施策をヒントに考えたそうです。
※ご存知の通り、薫堂さんは熊本県の観光アドバイザーでもあり、「くまモン」の生みの親です。

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日光金谷ホテルでは厨房の若手スタッフから、清掃員の方まで、従業員一人一人が名刺を持っており、その名刺の裏に各自がホテルで一番好きなスポットの写真が印刷されているそうです。そしてホテルの様々な場所に「金谷ホテルのスタッフは違うデザインの名刺を持っています。ぜひ、声をかけて、名刺をもらって下さい。30種類の名刺を全て集めると、金谷ホテルの小さな写真集ができあがります」というメッセージが書いてあるポスターを張ってあるとのことです。

このような施策があることで、従業員側もお客さん側もコミュニケーションを始めるきっかけが生まれるのが、とても素敵だと感じました。私などは結構シャイなので、観光地で現地の方に気になった事を質問してみたいと思っても、なかなか話しかけづらいのですが、こういうきっかけがあれば、スムーズに会話を切り出せるのではないかと思います。

この事例を「ゆるキャラ」に置き換えてみても、ただ「ゆるキャラ」と握手したり、写真を撮ったりするだけだと、正直、30歳前後の私のような男性は、周囲の目も気になり、なかなか近づきがたいですが、面白い名刺がもらえるという要素がプラスされれば、近づくモチベーションになりますし、周りに対して近づく大義名分にもなるので、名刺を使ったコミュニケーションは「ゆるキャラ」でも非常に有効です。まさに、それを上手く実現したのが、「くまモン」です。

電通の岸勇希さんの著書「コミュニケーションをデザインする本」にも電通の名刺の裏の色が100パターンある理由を、名刺交換の際にお客さんから「なぜ、あなたはこの色を選んだのか?」を聞かれることで、名刺交換の場を単に会社や個人の情報交換で終わらせるだけでなく、そこにいる“個人”や“電通”という存在を先方から“気にしてもらう”ためと書かれていましたが、今や、一番身近で実用的なPRツールは名刺なのかもしれませんね。

最後まで読んでくださってありがとうございました。